今年も残すところあと4週間程となりました。
年明けに世の中の個人事業主が悩まされるのが、確定申告に向けての作業です。日本全国の経営者たちが、この何の利益も生み出さない作業のために時間と労力を取られるというのは、果たして日本全体の国益としてどうなのだろうかと疑問に思うところです。
しかし何と文句をたれようと、現時点ではやらなければならないことなのでやるしかないです。
為替差損益とは何か
eBayはじめ外国に向けて商売を行っている際に面倒な事の一つが、為替についてです。
国内で商売をしているのであれば、日本円で販売して日本円で仕入れや経費を支払って、それをそのまま記帳するだけで済みます。
外国人相手に販売をしている場合、例えばドルで販売して、受け取ったドルを円に振り替えて、なんてことをやります。
例えば、300ドルの売上が発生した際のレートが1ドル=100円だったら、この売上は日本円で30,000円となります。
そしてこの300ドルを日本円に振り替えた際のレートが1ドル=110円になっていたら、入金される金額は33,000円となります。
この、売上と実際の入金額の違いが為替差になります。この場合は3,000円プラスになっているので、3,000円の為替差益です。
逆に、300ドルを日本円に振り替えた際のレートが1ドル=90円になっていたら、入金される金額は27,000円です。この場合は3,000円の為替差損です。
というのが、大まかな為替差損益の考え方です。
実際の入出金
上記のように、ドルでの入金が1回発生する毎に円に振り替えて・・・なんて事は、実際にはやりません。そうなると、どこでどれだけの為替差損益が発生しているのか、暗算では計算が難しくなります。
例えばこんな感じです。
11月1日(1ドル=112.70円)
・300ドル(300×112.70=33,810円)の売上
11月2日(1ドル=113.18円)
・230ドル(230×113.18=26,031円)の売上
11月8日(1ドル=114.06円)
・185ドル(185×114.06=21,101円)の売上
11月12日(1ドル=113.83円)
・eBay手数料70.1ドル(70.1×113.83=7,979円)支払い
11月16日(1ドル=112.82円)
・500ドル(500×112.82=56,410円)を円預金に振替
入金時の為替差損益
まず入金についてです。
ドルで入ってきたものをドルで保管するだけなので、当然ながら為替差損益は発生しません。上記の場合、11月1日、2日、8日についてです。
手数料等支払い時の為替差損益
次に出金についてです。
11月12日について、当日の採用レートで計算すると、円では7,979円支払っている事になっています。
一方、帳簿上はどうなっているかというと。
まずドル残高は、300+230+185=715ドルとなっています。そして円換算での残高(簿価)は33,810+26,031+21,101=80,942円となっています。この時点での簿価のレートは
80,942 ÷ 715 = 113.2056 円/ドル
です。この残高から70.1ドル支払います。簿価換算で
70.1 × 113.2056 = 7,935円
となります。
この金額と採用レートで円換算した金額の差が為替差になります。
この場合だと44円の為替差益になります。当日のレートだと7,979円支払ったことになっているのに帳簿帳は7,935円しか出金していないので、為替差益分だけ得をしたという感覚です。
ちなみに、これを支払った後の簿価は
80,942 - 7,935 = 73,007円
もしくは、当日の採用レートによる金額と為替差損益を使って計算するならば
80,942 - 7,979 + 44 = 73,007円
となります。
円振替時の為替差損益
考え方は上と同じです。なので同じやり方で計算できます。
この時点での残高はドルベースで715-70.1=644.9ドル、簿価では上で計算した通り73,007円です。
ここから、500ドル(当日の採用レートによる金額は56,410円)を円預金に振り替えます。
出金前の簿価のレートは
73,007 ÷ 644.9 = 113.2067 円/ドル
です。500ドルを簿価のレートで計算すると56,603円です。
実際には円預金には56,410円しか入金されないのに、ドル残高が簿価では56,603円減ることになります。この差額である193円が為替差損になります。
ここまで、上で説明したのと同じ考え方です。
せっかくなのでもう一つの考え方、レート差による計算方法も紹介します。これも突き詰めれば同じような考え方なのかもしれませんが。
当日の為替レートと簿価のレートの差は
112.82 - 113.2067 = -0.3867
です。つまり500ドルだと
500 ×(-0.3867)= -193
円の差が出ることになります。今回はマイナスなので、これが為替差損ということになります。
最後に、出金後の簿価です。
73,007 - 56,603 = 16,404円
もしくは
73,007 - 56,410 - 193 = 16,404円
です。
実際の計算方法
考え方は上で書いたとおりですが、こんなものをいちいち手計算でなんてやってられません。という事で表計算ソフトを使って簡単に計算する方法を紹介します。
今回はLibreOfficeを使って、こんな感じに作ってみました。端数処理の関係で上で説明したのと比べて為替差に1円のズレが出ていますが、あまりお気になさらず。
黄色の列は手入力で、青の列は数式で計算しています。3行目はスタート時の残高を入力しておきます。
4行目に入力されている数式は以下のとおりです。
E列:=ROUNDDOWN(C4*$B4,0)
F列:=ROUNDDOWN(D4*$B4,0)
G列:=IF(D4=””,0,ROUNDDOWN(D4*(B4-J3)))
H列:=H3+C4-D4
I列:=I3+E4-F4+G4
J列:=I4/H4
今回は、採用レートと簿価のレート差で為替差損益を計算する方法を使っています。
LibreOfficeとExcel、OpenOfficeなどその他表計算ソフトの間では微妙に仕様が違っているので、もし計算結果が変な値になってしまう場合は、それぞれの表計算ソフトに合う形に数式を変えてください。
為替差の計算には履歴管理が必要になるため、最低でも表計算ソフトを使うのがほぼ必須になります。PC普及前から輸出事業を行っていた人はこれを手計算でやっていたのかと思うと、気が遠くなります。